いやいやえん

映画・DVDの感想ブログです。個人の感想なのでネタバレしています。

一命

【概略】
17世紀。戦国の世は終わり、平和が訪れたかのようにみえた江戸時代初頭、徳川の治世。しかし、その下では大名の御家取り潰しが相次ぎ、仕事も家もなくし生活に困った浪人たちの間で【狂言切腹】が流行。それは裕福な大名屋敷に押し掛け「庭先で、切腹させてほしい」と願い出ると、面倒を避けたい屋敷側から職や金銭がもらえるという、都合のいいゆすりだった。そんなある日、名門・井伊家の門前に一人の侍が、切腹を願い出た。
時代劇


.5★★★☆☆
同じ原作を使ってるため、実質的に「切腹(1962年)」のリメイク作品になってると思う。…なのでどうしても比べてみてしまいますが、残念ながら「切腹」ほどのただならぬ緊張感や迫力をどうしても感じ取れなかった。逆に言えば「切腹」の良さが改めて際立って見えたとも言える。
市川海老蔵さん主演。仲代達矢さんが演じた津雲半四郎を演じていますが、どうしても若さが前面に出てしまう。重苦しい中年のうらぶれた感がない。
津雲半四郎の話が進むにつれて、事の次第が明らかになっていく面白さは変わりませんが、画面から目が離せなかった「切腹」に比べ、重苦しい話ながらもどこか軽い。上辺だけの重さな気がするのだ。
あと半四郎のスタンスも違う気がする。武士の面目が単に上っ面なだけであると明かした「切腹」、しかしこの作品では武士の面目を目前に引っ張り上げただけのように見える。
…とはいえ、現代の邦画のリメイクとしてはそこそこの出来栄え、人にお勧めするなら絶対「切腹」だがこの作品も悪くはないとは思う。ただ、見終わったあと「う~ん」と悪い意味で唸っちゃったかな。人の世の不条理さを捉えた原作の良さは踏まえられていると思うし、多少あざといが重厚質な演出でみてくれの軽さも上手く抑えられていると思う、ただ回想パートが長すぎるのと演出面でのくどさがありテンポが悪い。雪も必要ない、ラストもいまいちです。
武士の面目の象徴でもある赤備えをがっつり倒した瞬間の沈黙は良かったですが。良くも悪くもエンターテイメント作品になってしまっているところはやはり三池監督なんだろう。
そしてやはり「痛み」。「切腹」の記事でも書いたことだけれど、竹光切腹での痛み、大事な者を亡くした痛み、面目を失う痛み。それより何より、人間として負うべき心の痛み。現代に通じるところも変わらないと思います。

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