いやいやえん

映画・DVDの感想ブログです。個人の感想なのでネタバレしています。

昔々、アナトリアで

【概略】
殺人容疑者を連れて死体の捜索を始めた警察官たち。容疑者の曖昧な記憶に草原を転々と移動させられ、彼らは疲労と苛立ちを募らせていき…。
サスペンス


.5★★★☆☆
製作国が、トルコ/ボスニアヘルツェゴビナというちょっと珍しい本作。
首都アンカラ地域で起きた殺人事件の死体を捜しに行く、警察官・検事・検死官・殺人容疑者と発掘作業員たちが、死体遺棄現場らしいアナトリアで過ごした一夜とその翌日の検死を描いたもの。つまり「行って、捜して、見つかった」というだけの話なのですが、意外と謎の要素もあるので、150分以上と長い映画なのに最後まで見続けることが出来ました。
なにより綿密に計算されつくした登場人物一人一人の描写が見事で、波紋のように広がる彼らの心理描写は、ラストに一つの小さな波紋が静寂とともに広がって行くのです。
若い検死官は子供がなく離婚しており、検事の赤ん坊を置いて自死した女性の話は彼の妻の話であるということがわかる。警察官の子供は精神的に問題があって、それが夫婦間を波立たせている。逮捕された男は、友人に酒の席で口をすべらした事が原因で喧嘩し友人を殺してしまう結果、実子と思われる友人の子に石を投げられたとおり遺された友人の妻子は育ての父と実父を両方なくしてしまうのだ。…そう考えると、これは「女性を幸せにできない男たち」の物語でもあるのだと思う。
ひとえに展開はストイックなテンポを排する演出で、混迷する状況を、さもありなんと活写しているかのように見える。しかし実況検分にユーモアをはさんでみたり、死体袋を忘れたり、車のトランクに遺体が入らないからもう一回死体を縛りなおそうと言ってみたりと、人の死を遠巻きに見る現実味ある描写もあった。映画は、ラストで検死官がとても曖昧な決断をくだして終わるのですが、まるで「昔々…(こんなことがありました)」と、この半日の事件を逡巡するかのようにも見えた。
たくさんの「窓」が間接的に遠巻きに観客に作品を眺めさせる事を促していた。
作品に流れている…なんといえばいいか、影のあるニヒリスティックな感じはこの監督の味なんだろうか。

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