いやいやえん@引っ越しました!

映画・DVDの感想ブログです。個人の感想なのでネタバレしています。

雪の轍

【概略】
カッパドキアで洞窟ホテルのオーナーとして裕福に暮らすアイドゥン。しかし、妻とも出戻りの姉ともうまくいかず、賃借人とはトラブル続きだった。冬になり雪がホテルを覆い尽くすと…。
ドラマ


.5★★★☆☆
愛すること、赦すこと―もがきながらも探し続ける、魂の雪解け。
本作はトルコの世界遺産、カッパドキアが舞台。カッパドキアの風景の変化が作品に深い味わいをもたらしてくれる。特に雪で覆われた岩石遺跡群の風景が、心に深く沁み込んでくる。
196分という長尺で不安もありましたが、実に(精神的に)スリリングな作品であった。
主人公のアイドゥンは俳優として成功出来なかったけれども父から受け継いだ財産でホテル・オセロを開き悠々自適な生活を送っています。しかし、冬の訪れで雪に閉ざされていくにつれ、妻や出戻りの妹との愛憎や、家を貸しているある一家との不和が生々しく描かれていく事になります。
アイドゥンの心の澱みたいなものが段々と表面化し、決して悪い人間ではないのですが物質的な豊かさと心の豊かさというものは全く違うのだという事がはっきりと描かれています。しょせん1人の人間というものはちっぽけな存在で、心の中の感情や固執した考えなどに縛られてしまってそれが大きな独善となってしまうのかもしれませんね。それぞれが自分の価値観や考え方を押し付けていくのが実に痛々しく感じられました。
父の代から家を貸してきたイスマイルが家賃滞納をしたので家具を差し押さえたようで、するとこれを恨んだイスマイルの息子イリヤスが、アイドゥンの乗る車の窓に石を投げてしまう。始まりはこんなほんの些細ないさかいだった。
辛辣な言葉の応酬には所々でハッとさせられ、人と人とが理解し合うこと、赦し合うことの難しさを痛感させられます。
言ってしまえば、主人公が、妻や妹に軽蔑され、家賃を滞納している賃借人に憎悪されて孤立して行く話なのです。
アイドゥンを中心とした人間関係は3つ。賃借人との不和。出戻りの実妹との軋轢。慈善事業に熱心な妻との亀裂。これがまあ気まずい空気が流れっぱなしで凄くモヤる。登場人物たちのそれぞれの偽善と本音に身がつまされる思いがしました。結局は貧富の差なんですよね、劇中でそうではないと言っていましたが。
鬱屈した見事な会話劇だった。カッパドキアの自然の美しさが、人間の重苦しい感情とは対照的に感じられた。