いやいやえん

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王の涙 -イ・サンの決断-

【概略】
激化する党派争いの中で暗殺の脅威に苦しむ若き王、イ・サン。心を許せるのは側近の宦官・カプスだけという状況の中、宮中に強大な策謀が渦巻き始め、ふたりも巻き込まれていく。
史劇


.0★★★★☆
陰謀渦巻く王朝を舞台に、実在の王イ・サンをめぐる暗殺事件「丁酉逆変」をモチーフにしながら史実に残されながらいまだ謎の多い歴史の内幕を描いた作品。
理想を抱きながらも暗殺の危機に怯えていた若き王が、偉大なる王へと成長していくきっかけとなった運命の一日を描きます。
バリバリの陰謀・謀殺物と思いきや、いい意味でのエンタメ活劇でした。ヒョンビンは、聡明な若き王を演じていますが、なかなか似合っています。
たった1日の間の出来事なのに、宮廷内の人々から刺客まで多くの人たちの、幾重にも絡まった思いが徐々に見えて繋がりが分かって来るのが面白かったですね。

王が唯一心を許した宦官・尚冊(サンチェク)カプスが、特に良かった。この人の宿命がまたね、涙ものなんですよ。イ・サンを暗殺する道具として、子供の頃から無理やり暗殺者として育てられ、番号でしか呼ばれず、その人生を使い捨てられていった子供たち。イ・サンの刺客はウルスという男なんだけど、実はカプスとは義兄弟の間柄で、そうカプスもまた刺客の一人だったんですね。しかし、幼い頃からイ・サンと過ごす内に聡明な王に心を移し、最後は、わが身を捨てて王を守り抜いた背景がしっかり描かれていたのがとっても良かったのです。カプスは仲の良い弟分をかばってわざとじゃんけんに負け、宦官になったいきさつが描かれていて、だから、自分よりも年少の王にも情が移ったのだと、納得でした。この二人の情と、義兄弟ウルスとの間の情が、なんともいえない。
人間関係がややこしいのですが、敵味方が分かると映画力で自然のめり込んで見れました。
見所はやはり、幼い頃からイ・サンに仕えてきた宦官であり、暗殺者でもあるカプスの王への忠誠と情。そして、孤独だった幼いイ・サンにとってカプスの存在がどれだけ大きなものであったか、そのカプスが暗殺者と知った時の王の喪失感と悲しみ。この二人の心情描写がとっても切ないのです。幾年にも及ぶ思い出…「あの折は、刺客であったか」と執拗に質問する王の気持ちを考えると、心がヒリヒリとして、たまらなくなります。
また後半の暗殺者とのバトルシーンでの王の強靭な弓さばきが見事!血まみれになって暗殺者とバトルする王…いやありえないよね、武闘派過ぎてありえないんだけど、かっこいいのでOKなのである。
結局、全ては不問にされるのですが、「中庸」第二十三章で書かれている「小事を軽んじず至誠を尽くせ」を模範とし、善政を行うのであろう王の人格者としての成長が、ラストで清々しく描かれていたのが良かった。
「中庸 第二十三章」
小事を軽んじず至誠を尽くせ 小事に至誠を尽くせば誠となる
誠あるものはにじみ出る にじみ出れば表れる
表れればいよいよ著しく 著しければ感動を呼ぶ
感動は変化を起こす 変化は万物を生育する
天下において至誠を尽くす者のみが 己と世を変えることができる

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