いやいやえん

映画・DVDの感想ブログです。個人の感想なのでネタバレしています。

薬指の標本

【概略】
ある日の夏、美しい少女・イリスは不慮の事故で薬指の先端を失ってしまう。そのことがきっかけで仕事を辞め、近隣の港町へ引っ越す。そこで標本技術士の男と出会い、次第に特別な関係が生まれ…。
ドラマ


.5★★★☆☆
原作は読んでいませんが、とても美しい作品でした。オルガ・キュレリンコさんがヒロインを演じていたとは知りませんでした、まだ少女っぽさがどこか残る印象、これが凄く良かった。
舞台は森の中の洋館、元は女子寮だったようですね。映像の繊細さや静かで甘美な雰囲気はとても心地よく、そしてどこかエロチックでもある…赤い靴を履かされるシーンなんてどこか倒錯したフェチの世界。「毎日履いてほしい、私が見ていなくても」
また、静寂さの中のねっとりと絡みつくような感触がとても良かった。カメラの角度などもまるで汗や匂いなどが漂ってきそう。
忘れたい過去を標本にするという標本技術士…これもなんだか幻想的で、家の焼け跡のキノコから、楽譜に書かれた楽曲まで、ありえないものを標本にするというこれはファンタジーのよう。

靴が馴染むにつれ、やがて標本室に囚われていくイリス。靴=非現実な世界に彼女は自ら入り込んでしまった。ただ、元電話交換手の老婆や靴磨きの老人の言葉から、標本室はまるで「青髭」のような恐ろしさも感じられる。前任者たちはどうなったのか。結局イリスは、薬指を標本にしてもらうために標本室に入っていき、そこで終わる。実にミステリチックです。
靴を脱ぐことで自由を得るのか、それとも博士と共に倒錯した世界に入り込むのか。どっちなんでしょうね。どこか儚く不安定な美しさに満ちた作品でした。

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