いやいやえん@引っ越しました!

映画・DVDの感想ブログです。個人の感想なのでネタバレしています。

裁かれるは善人のみ

【概略】
妻子と慎ましく暮らす自動車修理工コーリャ。強欲な市長に土地を買収されそうになった彼は、友人の弁護士ディーマと共に裁判に臨むが…。
ドラマ


.5★★★☆☆
圧倒的な自然の前で人間が非力なように、強大な権力を前に、小さな希望も砕かれるのか―。
ロシア北部の小さな町で妻子と暮らす自動車修理工のコーリャ。強欲な市長のヴァディムは、彼らの土地を買収しようと企む。自分の人生の全てともいえる場所を失うことが耐えられないコーリャは、強硬策に抗うべく、友人の弁護士ディーマをモスクワから呼び寄せる…。
原題は「リヴァイアサン」。主人公は勿論のこと誰一人として幸せにならない映画です。賄賂、暴力、職権乱用、裏切りなどどこの国でも行われる粗悪な事が起こり、政治も司法も警察も腐りきっている田舎町の物語。
権力と宗教という重い題材を正面から投げつけてくるのだけど、結果は邦題どおり、裁かれるのは善人のみなのです。
この善人が何を示しているのかというと、本当の意味での善なる人ではなく、一般市民、素朴な人間の事を指すのでしょう、つまりはコーリャの事を。しかし彼が善人というのはちょっと違うと思います。確かにコーリャの言い分は正しいけれども、みていたら人間性には問題ありなのがわかります。なんか「善人」とするにはちょっといまいち…の人物なんですよね。これが本当に朴訥な田舎のおじさんだったらわかります。また子供は後妻を罵倒したりと冷たくあたっています。行き場のない哀しみは後妻にもあてはまる。いつまでも懐かない息子、単調な魚の加工工場のパートに出向く以外、日々の行き場がない。
序盤と後半二回ある、女性判事がロボットのように長々と早口で判決文を読み上げるあのシーン。あまりに無慈悲な権力の在り方を感じてしまった。
権力をもった人物たちはみんな揃って傲慢で、たいして田舎の人々は皆みすぼらしく不幸な空気が漂っています。それにしてもロシア人は皆よく飲む。飲んでは語り、飲んでは互いに賞賛したりして、射撃したり(飲んでるのに?)車を運転したり(飲んでるのに?)していました。
印象強いのは、終盤で、市長が教会で自分の息子に「神様は全部見てるんだ」とかしれっと言うとこ。神は本当にみているのか?と思わせられる状況下でのあのシーンはほんと、殴りつけたくなった(監督の巧みな演出ですよね)。一般人は耐えるしかないのか。
結局起こした裁判には敗訴するも、市長には隠蔽した犯罪の過去があり、それを知る弁護士は市長との交渉を成功させるも、後妻の妻は弁護士とデキて、一度は戻った後妻が再度出て行った際、自殺か他殺か不明な状況で発見され…妻殺害容疑でコーリャが逮捕されるという…。なにこれバッドエンド!?後妻殺しの犯人は、ハンマーのくだりとか、息子ロマの仕業じゃないの…?
邦題が明かしちゃってるからネタバレも何もないですが…「権力には、一般市民は太刀打ちできない」。なんて現実的で無慈悲な事実だろうか。あまりに不条理なストーリーには心が暗くなるばかりです。
寒々しい光景が目に焼き付きます。浜辺に打ち捨てられた廃船と巨大なクジラの白骨。この陰湿な風景は、この町に住む人々の心そのもののようでした。