いやいやえん@引っ越しました!

映画・DVDの感想ブログです。個人の感想なのでネタバレしています。

だれのものでもないチェレ

【概略】
1931年、ハンガリー。孤児院で暮らすチェレは、養育費目当ての農家に引き取られ厳しい虐待を受ける。家出をするもすぐさま施設に収容されたチェレは、再び富農に引き取られ、馬小屋で老人と暮らすことに。
ドラマ


.5★★★☆☆
服も着せてもらえない、学校にも行けない。ただ牛の番をするだけ…。厳しい虐待を受ける日々。
牧歌的な風景の中で継子いじめが延々と描かれる。継子として子供を引き取る農民は、貧しさゆえ報奨金欲しさに孤児を引き取るのだが、引き取っても暮らしは楽にならず、怒りや悲しみは孤児に向けられてしまう。
とにかく暗い映画だった。非情な養親に引き取られ、つらい目に合わされるチェレの、ひたむきな眼差しが悲しみを強くする。一緒に馬小屋で暮らす老人の優しさに、初めて人との心の交流を知るも、チェレには更に過酷な運命が待ち受けていた。
1931年、ホルティ独裁政権下のハンガリーとの設定なのですが、ハンガリー史を知らないものだから、ホルティって誰?とかそういうレベル。独裁政権下で動乱の時代だから暮らしは貧しかろうとは想像するだけ。貧農、富農の間をたらい回しにされ、チェレはまだ子供なのに誰か抱きしめてあげて!と思わずにいられなかった。
こういう映画ですから、勿論最後もハッピーエンドにはならない。
チェレ(少年に見えますが、少女です)は、最初の農家で全裸で(服をもらえないため)牛追いをさせられている際、近所の与太者から性的いたずらをされてしまいます。が、養父母は夫婦の会話で「何がルディおじさんだ、地獄に落ちろってんだ」くらいのことしか話しません。更にスイカで遊んで服を借りたら、激しく罵られたあげく焼けた石炭を握らされるのです。養母はさすがに心痛めたのか「あんたがもっているのは自分だけ」と忠告するのですが…。
家出して今度は強欲な農家に引き取られたあと、かつてはとても裕福だった老人と知り合います。財産を取り上げられ飼い殺し状態の老人に優しくされたチェレは、いつか自分の実母が森から家が完成したら迎えに来てくれるという空想話をするのです。そしてこの老人に連れられて、初めて教会へ行きます。そしてキリストに祈るのです。
しかし、教会からの帰りすがら老人と憲兵が少し話をしたのを見た養母(老人の財産を奪った)は、老人が憲兵に訴えたのではないかと考え、老人を毒殺してしまうのです(えー)。さらに養母はチェレがこのことを憲兵に訴えるのではないかと考えて、ミルクに毒を入れて殺そうとしますが、チェレが泣きやまない赤ん坊を見かねてミルクをやろうとすると、半狂乱になって「赤ん坊を殺そうとした!」と叫ぶのでした。
そしてクリスマスの夜、みんながご馳走を食べているのにチェレはなにも与えられません。腹をすかせた彼女は、テーブルから食べ物をとって逃げ出し、小屋でろうそくに灯りをともします。そして祈るのです。あの教会のときのように。しかし、ろうそくの火が、藁に燃え移り…小屋は炎に包まれます。そして映画は終わるのです。
「お父さん」と呼びかけると「誰がお父さんだ!」と怒鳴られ、「お母さん(養母)は私を愛してくれてる」と信じることしか出来なかったチェレ。この映画を通して、独裁政権下でたくさんいたであろうチェレのような子供に対する批判や悲しみ、憤怒をメッセージとしたのかもしれません。