いやいやえん

映画・DVDの感想ブログです。個人の感想なのでネタバレしています。

ボヴァリー夫人とパン屋

【概略】
マルタンの営むパン屋の向かいに、愛読書の「ボヴァリー夫人」さながらのイギリス人夫妻が越してくる。マルタンは奔放な夫人から目が離せなくなり…。
ドラマ


.5★★★☆☆
長年、パリの出版社に勤めていたマルタンは、実家のパン屋を継いでいる。パンをこね、焼くだけの日々である。楽しみは読書で、フローベールの「ボヴァリー夫人」を、暗記するほど愛読している。
「ボヴァリー夫人」を読んだ事がないのでなんともいえないのですが、どうやら「田舎の平凡な結婚生活に倦んだ若い女エマ・ボヴァリーが、不倫と借金の末に追い詰められ自死するまで」を描いた作品のようです。要するに不倫して破滅していく話なんですね。同じ苗字のボヴァリーという夫妻が越してきてから、このエマに奔放なジェマを重ねていっていくパン屋の主人公。妄想だけですんでいればよかったものの、気がつけばボヴァリー夫人とジェマの事ばかり思案するように。そして、ジェマは金髪美青年と不倫。やばい、このままじゃ小説の通りになっちまう、と主人公は思うわけです(笑)
この中年主人公マルタンの妄想がストーリーを牽引していくわけですが、ヒロインで奔放なジェマを演じるジェマ・アータートンが実に魅力的に描かれていました。熟した果実…といってしまっていいかわかりませんが、その視線、ひらいた唇、憂う横顔が実に美しい。ジェマが見せる「無意識な色香」(髪の毛を上げてうなじが見えたり、カーディガンを脱いで肩が露になったり、寄り添って入れる茶などの仕草)に惑わされるマルタンの様子が可笑しくもあり。本来の女性のエロチックな部分ってこの無意識な部分が大きいよね!男性諸君には悪いけれども、それは無意識であって挑発とは違うのですよ。当然美人(ジェマ・アータートン)がそうするのだから、男は自然と魅せられてしまう。濃密なエロシズムが漂う。
小説の世界と現実の世界を混同したパン屋が巻きおこす“妄想"と、青年との不倫に溺れる人妻の“現実"。フランス映画らしいエスプリの効いた作品で、思わず笑いがこみあげてしまった。
結局、ジェマは死んでしまうのだけれど、その死因はなんとも笑えないものだったな。マルタンの作ったパンが喉に詰まった、なんて。小説ではエマの不貞を日記で夫が知るのだが、この場合ジェマの日記には夫との明るい再出発の話が書かれていて、それが現実的でもあり小説とは真逆で皮肉的だ。

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