いやいやえん

映画・DVDの感想ブログです。個人の感想なのでネタバレしています。

マイ・マザー

【概略】
17歳の少年・ユベールは、平凡な街で世間並みの退屈な日々を送っていた。一方で、口うるさく自分をコントロールしたがる母親の存在が許せず…。
ドラマ


.0★★★★☆
17歳、僕は、母を、殺した―。
精神的な意味合いでです。ティーンエイジャーならではの「理由のない苛立ち」に耐える日々に嫌気がさしているユベールが、精神的な母との決別を描いているわけです。
グザヴィエ・ドラン監督のデビュー作、若干19歳。

主人公は監督が演じるユベール・ミネリ、17才の高校生。プライドが高くゲイでもある彼は、BFと絵を描く時間だけを愛しく思っているが、シングルマザーである母親との「現実の」生活には嫌気がさしている。だったら家を出るという選択肢もあるのだが、それもかなわず苛立ちは募るばかり。生活面で母親に依存しつつ、目の前の母親に否定的感情を抱くという生活。母子物語としては、それで十分「普通の」ティーンエイジャーがいる母子関係にみえるが、それだけではなかった。母親に心寄せていくが、受け入れてもらえないもどかしさ。
憎くて、憎くて、たまらないが、現実的に殺すことはしない。なぜなら彼は母親を愛しているからだ。ユベールはこう語る。
「母を愛している。でも息子だからではない。母を傷つけるヤツがいたら、そいつを殺したくなる。でも母より愛してる人はたくさんいる。これはパラドックスだ。母を愛せないが、愛さないこともできない。」

若干19歳のドラン青年が、何かを悟ったかのように母への愛を語る。ここの台詞にはびっくらこいたし、実にそのとおりだ。結局どんなに憎くとも、「母」というものに対する畏怖と敬愛の念はどの世界の人間でも、変わらないのだろう。
ケンカして、仲直りして、またケンカする。幾度となく繰り返すその反復、半自伝的かつ「母との軋轢」という普遍的なテーマを扱いながら、決して独りよがりな作品にはなっていない。
息子がゲイだとわかったことで、父親と協議の末ユベールは寄宿にいれられBFと離れ離れにされてしまうのだが、ここで印象的なのは、母親が校長に色々言われた末に怒鳴るシーンと、ユベールがドラッグ使用したまま母親に心の内をぶつけるシーンだろう。どちらも、相手を愛していると言う心がある。

彼が<王国>と呼ぶ海辺の家に向かう終盤、幼年時代の若い母と幼い彼が幸せに暮らしている記憶のシーンが続く。母はいないと「殺して」おきながらも、彼が<王国>にためているものは、実は幸せな記憶だ。自分と母親が既に「決して交わることのない平行線上にいる」ことを自覚し、その距離に狼狽している青年、それがユベールなのだ。
複雑怪奇な母への愛を前面に出した、傑作。ドラン監督、恐ろしい子…!
最終的に、母親は前述の通り息子の味方となり、恋人アントナンともようやく会い、<王国>でユベールはようやく母を理解する事が出来るのである。

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